6-12026-03-06そのとき、水族館で拾った焼塩のメモの内容が脳裏に浮かんだ。 ──STEP1 手をつなぐ ただ手をつなぐだけ、焼塩にとくに意味はないはずだ。 だから焼塩はなかなか手を離さず、ただ私を心配しているだけなのだ…… 私の言い訳を覆い隠すような思考──焼塩の意外なほど細い指がゆっくりと収まり──私の指と十指を絡ませた。 「!?」 「……これがSTEP2よ。」 焼塩のつぶやきは海風にさらわれながらも、私の耳元をかすめた。 初めての感触に固まっていると、焼塩が静かに口を開いた。 「……さっき、悩みがあるのかって聞いたでしょ?」 「えっと~やっぱり何か悩みでもあるの?」 焼塩は首を横に振った。そういうわけじゃない。学校の友達も先生もみんな優しいし、陸上部のみんなも親切で、私に期待してくれて、特別に大事にしてくれて──」 彼女はわずかに言いよどんだ。 「……でも、特別に大事にされるのも、ちょっと疲れるのよ。」 焼塩の口から漏れた弱音には、かすかな罪悪感がにじんでいた。 私は返す言葉が見つからず黙り込み、焼塩はかすれた声で小さくささやいた。 「ねえ、温水。私と一緒に帰宅部に入らない?」
出典:Anitabi問題を報告